小児科医からこれだけは言わせて

写真が趣味の小児科医が小児臨床の現場のことやカメラのことを記載していく

【ある小児科医の提言】熱、口と目と手の赤み、首の痛みと発疹 川崎病について 中編

こんにちは、小児科医あきらです。
前々回、川崎病の診断に関しての記事を書いてみましたが、今回は治療に関して解説していきます。前後編に分けるつもりでしたが、内容が増えてしまったため、前中後編になります。  
前編はこちらです!

 

drakira.hatenablog.com

 

ガイドラインにかかれている川崎病の治療アルゴリズムがとてもわかり易いので貼っておきます。
基本はこのフローチャートに法って治療を行います。各施設や実施している臨床研究などによって異なりますが、大まかの流れはどの施設でもこちらに沿っているはずです。
 
 

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川崎病急性期治療のガイドライン平成24年改訂版
 

初期治療

前回も書いたとおり、川崎病で防がなければならないのは冠動脈の病変です。急性期の強い炎症反応を可能な限り早く終息させるために治療を行います。まずは免疫グロブリン 持続静注とアスピリンの内服を開始します。

初期治療不応例の治療選択

初回のIVIGに反応しない、つまりは治療開始後48時間の時点で熱が再燃している症例の場合には、上のフローチャートに沿って治療を選択します。
 
①免疫グロブリン追加投与
②静注用メチルプレド二ゾロンパルス(IVMP)
③プレドニゾロン(PSL)
④インフリキシマブ
⑤ウリナスタチン
⑥免疫抑制剤 (シクロスポリンやメトトレキサート)
⑦血漿交換
 
現時点ではIVIGの追加投与が一般的ですが、他治療を併用する場合もあります。
では各治療に関してご説明します。

免疫グロブリン(IVIG)

現時点で最も信頼できる抗炎症療法です。2g/kg(体重)のIVIGを持続静注します。
有用性は高く、安全性も高い薬ですが、確認しなければならない点があります。
投与中は急激な容量負荷による心不全の発症、心機能低下、アナフィラキシーに留意します。また、頭痛や息切れ、血圧の変動や食欲不振など多岐にわたる副作用があり、注意が必要です。
また、IVIGはヒトの免疫グロブリンから精製する薬剤であり、各種ウイルスに関しての検査は十分に実施し、ウイルスの検出がない血漿を用いて作られます。過去の経験上、投与後に感染が発生された報告はありませんが、現在の医療レベルでわからない未知のウイルスがあった場合、感染してしまう可能性がゼロではないことを知っていただく必要があります。
 
軽症例以外の治療は発熱から7日目以前に免疫グロブリン(以下IVIG)の投与が開始されることが望ましいです。組織学的に冠動脈に炎症が出始める8-9日目以前に治療を行います。
80%近くの症例で免疫グロブリンの治療が終わって48時間以内に37.5℃未満に解熱します。のこりの20%程度の症例では追加治療が必要です。
このIVIGの治療に不応(効きにくい)と考えられる症例を予測するスコアがあります。
群馬大学(小林ら)のスコア  
血清Na 133mmol/l以下 2点
治療開始病日 第4病日以前 2点
AST 100IU/l以上 2点
好中球比率 80%以上 2点
CRP 10mg/dl以上 1点
血小板数 30.0☓10^4/mm^3以下 1点
月齢 12か月以下 1点
この合計点が5点以上であれば、IVIGの不応リスクが高いと考えられます。

アスピリン

アスピリンは、血小板凝集抑制作用と抗炎症作用があります。
IVIGと並行して30mg/kgで内服を開始します。解熱得られて48-72時間経過してから5mg/kgの1日1回の内服に減量し、その後継続します。冠動脈瘤などの合併症がなく経過した場合には2か月程度で内服は終了します。 

 

まとめ 

と、IVIGに対して反応性が良い場合にはここまでの治療で済みますが、中にはそうでない症例があります。 
後編へ続きます。

【ある小児科医の提言】熱、口と目と手の赤み、首の痛みと発疹 川崎病について 前編

こんにちは、小児科医あきらです。更新が遅くなってしまってすみませんでした。
 
今回は川崎病に関してご説明します。
少し長くなるため、前後編に分けます。まず、前編では川崎病の診断に関して書いていきます。

川崎病の一般的概要について

「川崎病」とは、一言で言えば、全身の中小動脈の血管炎です。
川崎病の診断は厚生労働省研究班による診断の手引きによって診断します。
各症状の特徴を知っておけば、自宅でもこの疾患を診断することができます。
何故かと言うと、この疾患は、発熱・目の充血・口の症状(口唇の発赤や苺舌)・頸部リンパ節腫脹・発疹・四肢末端の変化(てのひら、足の裏の赤みや腫脹)6つの主症状のうち、5つが揃ったら診断になるためです。

【ある小児科医の提言】昼夜ずっと咳が止まらない。マイコプラズマ肺炎について

 
はじめまして、小児科医あきらと申します。今回はマイコプラズマ肺炎に関してご説明します。
マイコプラズマ肺炎の特徴として、発熱と湿った咳の持続がありますが、病初期は派手な発熱があっても全身状態は比較的良好であることが多く、感冒と区別がつきにくいことがあります。
咳の症状は徐々にひどくなり、昼夜を問わず、ずっと持続する咳嗽が止まらなくなってくることが気管支喘息と異なります。
また、定形肺炎と呼ばれる一般的肺炎で処方される抗菌薬がマイコプラズマには効果が得られないため、そういった経過からもこの病気を疑って診療を進めていかなければなりません。
 
内服抗菌薬を開始してから2−3日経過して、解熱しない場合には薬剤耐性マイコプラズマ感染を考慮して、抗菌薬変更の必要があります。
 
①原因 ②症状 ③診断 ④治療 
に分けてご説明します。
 

①原因 

Mycoplasma pneumoniae感染による肺炎のことを指します。
学童期以降の肺炎ではこの疾患の感染が目立ちます。逆に言えば乳幼児の肺炎では頻度は低い疾患といえます。
 

②症状 

長引く頑固な咳が特徴です。最初に述べたように感冒と似ているため、症状が続いたり、マイコプラズマ肺炎の患者さんとの接触歴があった場合にこのタイプの肺炎を疑います。
胸部聴診で肺炎のときに聴取する雑音があれば、より強く肺炎を疑いますが、マイコプラズマ肺炎ではその雑音もはっきりしない場合があります。
 

③診断

レントゲンで肺炎像を確認した後、咽頭拭い液での検査提出を行います。医療機関によってはその場で結果を確認できる検査キットもありますが、陰性の結果だとしてもマイコプラズマ感染が否定できないため、検査期間は数日かかりますが、検査機関への検体提出をして、LAMP法というマイコプラズマDNAの検査を提出し、診断とします。
 

④治療

最初に選択する治療としてはマクロライド系と呼ばれる種類の抗菌薬が挙げられます。
薬によって治療期間も決まっているため、医師の指示通り服薬してください。内服により2-3日のうちに症状軽快しない(発熱が持続する)場合には抗菌薬の変更が必要なため、医療機関を再度受診してください。
また、マイコプラズマ肺炎の重症度が高いお子さんに対してはステロイドの使用も考慮します。

 

最後に

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小児科医あきらでした。
 

【ある小児科医の提言】熱が上がって喉を痛がっている…!溶連菌性咽頭炎について

こんにちは、小児科医あきらです。

溶連菌感染症について記載します。例のごとく初めに大事なことから記載していきますね。

溶連菌性咽頭炎は、「治せる病気」の一つです。どうしてそのように表現するかというと、小児科でも成人でも一般外来を受診する患者さんの多くはウイルス感染といえますが、インフルエンザウイルスなど特殊な例を除いて対症療法で経過観察する疾患が多いです。しかし、溶連菌性咽頭炎は抗菌薬での除菌により治療ができます。また、1~数週間後に起こりうるリウマチ熱や急性糸球体腎炎の予防のためにも早い診断が望まれます。そのため、疑わしい場合には積極的に迅速検査を提出し、診断、治療を行うべき疾患です。

では概要からお話します。

 

 

概要

溶連菌による咽頭炎は小児の咽頭炎のおよそ15%を締めます。

咽頭痛や咽頭発赤があるのに、鼻汁や咳嗽がないときは溶連菌性咽頭炎を疑います。

真夏に一時的に流行は減りますが、基本的には年間を通して流行がみられます。

 

症状

咽頭痛、発熱で急激に発症します。

診察では扁桃の発赤、白苔と呼ばれる、喉の奥の白い塊の付着をみることが多いです。口の所見としては苺舌と呼ばれる、舌の表面がいちごのようにブツブツになる症状も出ることがあります。

また、前頸部リンパ節腫大や、(小児では特に)嘔吐などの消化器症状を伴う場合があります。

発熱後12-24時間経過してから発疹を伴う発熱が続く、「猩紅熱」と呼ばれる感染症に至る場合もあります。

 

続発症

A群β溶連菌感染から2-3週間ほど経過してから、急性糸球体腎炎やリウマチ熱などを続発することがあります。それぞれの症状に関しては下記の通りです。

急性糸球体腎炎:血尿、尿量減少、むくみなど

リウマチ熱:発熱、関節の痛み、心内膜炎や心膜炎など

 

診断

外来受診のその場ですぐわかる迅速検査キットがあります。特異度は高いですが、感度がやや低く、感染があったとしても陰性となってしまう例が一部で見受けられます。

3歳未満では続発症が稀であり、積極的な迅速抗原検査は不要といわれています。さらに、健康なお子さんに病原性を持たない溶連菌保菌者がいることもあることを念頭において検査を提出します。

 

初期治療

続発症であるリウマチ熱を発症させないためにも、10日間の抗菌薬(サワシリン、ワイドシリン)投与が必要となります。決して「よくなったからもう薬いらないよね」と服薬を止めないでください。治療失敗や続発症に繋がる場合があります。治療失敗と評価した場合には別の種類の抗菌薬を使用し、除菌します。

基本的には抗菌薬開始後24時間経過すると他の人への感染力はなくなりますので、保育園や小学校へは登園登校可能です。感染後は前に記載した続発症である、急性糸球体腎炎のリスクが有るため、体がむくんだり、血尿が出たりした場合にはすぐに医療機関を受診してください。

 

最後に

以上が溶連菌性咽頭炎のまとめとなります。溶連菌って時々聞くけどよく知らなかった!という方も多いのではないでしょうか。少しでも参考になれば幸いです。

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【ある小児科医の提言】医師「アデノ陽性ですね〜」アデノって何? アデノウイルス感染症について

こんにちは、小児科医あきらです。

今回は「アデノウイルス感染症」 についてお話します。

以前、アデノウイルス感染症のうちプール熱(咽頭結膜炎)に関してに関して記載しましたが、その他にも表現型があるウイルス感染症なので、まとめて書いていきますので、この記事を読んでいただければアデノウイルスに関して十分な知識を得ることができると思います。

プール熱の記事はこちらです。

 

drakira.hatenablog.com

概要

臨床病態としては、咽頭炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎などの呼吸器感染症、咽頭結膜熱や流行性結膜炎などの眼感染症、出血性膀胱炎、胃腸炎、脳炎などがあり、一部、腸重積、腸管リンパ節炎、虫垂炎などにも関与します。

この感染症では他のウイルス感染症に比べて、炎症の度合いを示す一つの目安となる「CRP」と呼ばれる血液検査の結果が高値となることが多く、細菌感染症との鑑別が大事となってくることがあります。

流行機としては晩冬から春季、初夏に患者数の増加がみられますが、基本的に季節性はなく、年中感染者の報告はあります。

アデノウイルスの中には数十の型があり、どの型に感染するかで症状が変わってきます。しかし、臨床上どの型に罹患したかを同定することは必ずしも必要ではありません。

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診断

ウイルスの迅速キットがあり、患者さんの鼻汁、唾液、咽頭拭い液、喀痰などの検体からウイルスを分離して検査できます。発症から時間が経っている場合、一部の症例では本当は感染しているのに検査で陰性となってしまう場合があります。(検査感度は70%程度)

その場合には血液検査での診断とします。しかし血液検査ではすぐに診断がつかず、診断までの期間として数日を要します。

 

感染対策

潜伏期間は7-10日と長く、接触感染での感染力も高いです。アデノウイルスは経口感染あるいは飛沫経気道感染により伝播し、咽頭や結膜、消化管などの粘膜上皮、所属リンパ節で増殖します。また、糞便中に多量に排泄されており、それによっても糞口感染や接触感染を起こします。

プールなどで水やタオルが汚染されている場合には、ウイルスが粘膜から直接侵入するため、集団感染をきたすことがあります。したがって、咽頭結膜熱の流行の予防には、プールの十分な塩素消毒と、粘膜の洗浄、タオルを共有しないことがとても重要となります。近所の区民プールや、学校での水泳の授業の際には感染対策をきちんとしましょう。同じ学校や地域でプール熱が流行しているときには特に、くれぐれもタオルなど使い回さないようにしてください。

学校保健法では、アデノウイルスの臨床病型のうち「咽頭結膜熱」の診断に至った際には目と喉の症状が治まってから2日間を経過するまで出席停止扱いになります。

 

 

臨床病態ごとにまとめていきましょう。

眼疾患

 流行性角結膜炎

目脂と充血及び眼瞼結膜充血が主症状で、かゆみは殆どないとされます。耳前リンパ節腫大がみられることもあります。重症例や小児では結膜上にフィブリンや膿からなる偽膜が形成されます。

目脂で迅速検査を提出しますが、先程も述べたように一部症例では感染しているにもかかわらず陰性となってしまう場合があります。臨床症状で本症例と診断をつけ、感染リスクも考慮し、学校や保育園をお休みしていただく場合もあります。

だいたい10日から2週間で自然治癒しますが、重症例では角膜上皮下混濁をきたすことがあるため、ステロイド点眼や外科的偽膜除去、二次感染予防のため、抗菌薬点眼を行うこともあります。

呼吸器感染症

 急性咽頭扁桃炎

典型例では喉の奥に白いぽつぽつした滲出物がつき、真っ赤に腫れる急性扁桃炎を呈します。

高熱が数日間続き、自然経過で症状は軽快します。

 下気道炎

アデノウイルスの一部の型では重症肺炎をきたすものもあります。

消化器系疾患

 乳幼児下痢症

下痢症をきたした小児の5~9%の糞便からアデノウイルスが検出されます。多くの場合、一般的にロタウイルス性腸炎と比べて軽症なことが多いです。

 急性腹症(腸重積、虫垂炎)

上記疾患においてもしばしば糞便中にアデノウイルスが分離される場合があり、短期間に立て続けに繰り返すことがあります。下痢症状があり、上記の疾患となっていた場合にはアデノウイルス感染も考慮する必要があります。

泌尿器疾患

 出血性膀胱炎

血尿、排尿障害、頻尿などの症状を呈します。

 

治療

現在、これら急性感染症に対して有効な抗ウイルス薬はありません。重症肺炎に対してはステロイド投与による治療が試みられています。高熱が続くため、患者さん御本人の不快感を抑えるという意味でアセトアミノフェンを使用する場合があります。

 

簡単ではありますが、アデノウイルス感染症のまとめでした。

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【ある小児科医の提言】口の中になにか入れて遊んでいた後に苦しそうにしてる!気管内異物についての話

こんにちは。小児科医あきらと申します。今回は気管内異物に関してご説明します。
大事なことを一番初めに記載しますのでご確認ください。
もし、子どもが何かを口に入れてその後意識がなくなり、胸とお腹の動きがなくなってしまったら
①すぐに119番通報
②心肺蘇生を開始!如何に早く蘇生を開始するかでお子さんの予後が変わります。
<方法>
胸骨圧迫 両乳首の間を胸全体の厚みの1/3程度の深さまで強く押し込み、1分間に100回のペースで繰り返します。その際、1回ずつ圧迫を完全に解除してください。
胸骨圧迫を30回行ったら
顎を指で持ち上げ、お子さんの鼻の穴を塞ぎ(つまみ)息を吹き込み2回人工呼吸を行います。 口と鼻の距離が近い場合、救護者の口全体で鼻と口を覆っても構いません。
お子さんの胸が上がっていることを確認してください。
これらを泣き出すか、救急隊到着までの間続けてください。
そのような状態ではない場合、準緊急状態として対応します。
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本稿はイラストを見せながら説明する子どもの病気とその診かた 金子堅一郎著を参考に記載しています。
 
①定義 ②原因 ③症状 ④治療
に分けてご説明します。

①定義

誤っておもちゃや食べ物を飲み込み、気管内に入ってしまったことを言います。
2歳以下が2/3を締めていて、男児に多いです。
食道に入ってしまう食道異物とは対応が異なります。
 

②原因 

3歳以下では主にピーナッツなどの豆類が多く、お菓子や雨、果物や野菜などの食べ物が原因となります。
4歳以降では葉の詰め物やおもちゃの部品など、食物以外のものが増えてきます。
 

③症状 

大きい気道内異物では食道を塞いでしまい、窒息となります。 毎年50人近くのお子さんが窒息のため命を落としている現状があります。
小さい異物では突然激しく咳き込み、息が苦しそうになり、鳴き声もか細くなります。
咳が続き、喉や胸からゼーゼーひゅーひゅーという音が聞こえたりすることがあります。
症状が落ち着いても後からゼーゼーする音が出てきたり、咳が目立ってくることもあります。
 

④治療

・喉に異物が詰まって声が出せない場合
1歳未満の乳児
①片手で体を抑え、掌で後頭部をしっかり支えます。 胸を突き上げるように胸骨を圧迫します。
②数回行ったら掌で顎をしっかり支え、もう一方の掌の付け根で背中をたたきます。
これを繰り返します。

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1歳以上の幼児
ハイムリック法を実施します。背中から両腕を回して、子供のみぞおちの下で片方の手を握りこぶしにします。
その手で腹部を上の方に圧迫して気道内に入った異物を取り除きます。
・窒息でなければそのまま救急受診をしてください。
 

最後に

まずはつまらせる可能性があるものは食べさせたり近くにおいたりしないようにしましょう。
ピーナッツは3歳をすぎるまでは与えないでください。
誤飲の可能性もあるので、小さなおもちゃなどはお子さんの周りにおいたり、与えたりしないようにしましょう。
目安としてはトイレットペーパーの芯の穴を通るものはお子さんの喉を通ります。危険です。
お子さんがなにか食べているときに驚かせたりするのもやめましょう。食事のときには食事に集中するように教育することは大事なことです。
「ながら食い」は本当に危険ですし、良いことなどないと思います。避けたほうがいいでしょう。
 
参考として、日本小児呼吸器学会ホームページで、小児の気道異物事故予防ならびに対応パンフレットがあるので、気になる方は御覧ください。
 
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小児科医あきらでした。

【小児科医の提言】RSウイルスってなに? 急性細気管支炎、主にRSウイルス感染症に関して

はじめまして、小児科医あきらと申します。

今日は「急性細気管支炎」主にRSウイルス感染に関してご説明します。大事なことを一番初めに記載しますのでご確認ください。

RSウイルス感染はときに呼吸困難が増強して死亡することもある感染症です。

乳幼児、特に6か月未満のお子さんが、RSV流行期(夏場から冬にかけて)喘鳴(ぜーぜーすること)、咳嗽、鼻汁、発熱が続いて苦しそうな呼吸をしている場合には早めに近くのクリニックを受診してください。周りの流行状況が迅速検査実施のきっかけになることもあるので、保育園や幼稚園でRSウイルスが流行していた場合にはそのことを受診時に医師に伝えてください

経過が長くなり、入院が必要となる全身状態に至ることも珍しくありません。外来でみても大丈夫と判断されたお子さんでも半日1日経過後には酸素が必要となる状態に陥る場合もあります。

 

「急性細気管支炎」に関して、

①定義 ②原因 ③症状 ④検査・治療 ⑤初期治療後の見通し

に分けてご説明します。

①定義

細気管支炎とは、気道で言うところの「細気管支」と呼ばれる、解剖学的に気管、気管支よりももっと肺に近い部分の気道の炎症を指します。

冬季に多いですが、最近では7月末頃から流行しだす地域もあるため、注意が必要です。

乳児期では最も頻度が高く、重要な呼吸器疾患です。

 

②原因 

原因としてはウイルス性のものが多いです。最も重要なのはRSウイルスです。世界中のほとんどすべての小児が2歳未満のうちに感染しますが、6ヶ月以下の乳児では重篤化することがあり、再感染も多く、年長児の長引く咳の原因となることもあります。

その他、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ボカウイルスなどが原因となります。

 

③症状 

軽く経過する場合から重篤な場合まで様々です。乳児で気をつけなければならないのは無呼吸です。無呼吸症状が続く場合には気管内挿管が必要だったり、持続陽圧換気の適応を考慮しなければならないので、最初に述べたように早めに病院を受診していただきたいです。 基本的には鼻汁や咳嗽といった症状に引き続き、呼気性喘鳴(ぜーぜーヒューヒューすること)、多呼吸、陥没呼吸(胸をベコベコ凹ませながらこきゅうすること)がみられます。 時々喘息との区別をつけるのが難しい場合があります。高熱が続いたり、うめき声やチアノーゼが出現することもあります。

 

④検査・治療

バイタルサイン・身体所見を評価し、ウイルスの迅速検査採血検査、レントゲン検査、採血検査の必要性を考慮します。ウイルスの迅速検査は、感度特異度ともに高く、診断に有用です。しかし、保険算定の問題で、1歳未満の乳児、入院適応があるお子さん、あるいはパピリズマブという、抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体と呼ばれる、抗ウイルス薬の適応があるお子さんに実施することとなっています。

パピリズマブの適応に関しては長くなるため詳細は省きますが、RSウイルスに罹患した場合に重篤化するリスクが高い早産児や先天性心疾患のあるお子さんに使用し、RSウイルスの罹患を予防します。予防薬あるじゃん、と思った方いらっしゃると思いますが、薬価がべらぼうに高く、本当に予防が必要なお子さんに絞って使用するように、と適応が厳しく決められています。

つまり、1歳以上のお子さんで、RSウイルス感染があったとしても、RSウイルスの迅速検査は「入院適応がある」と判断される場合にのみ実施することが一般的です。

 

6ヶ月未満の乳児で、細気管支炎の可能性が強ければ、入院施設のある病院への紹介が必要になります。

6ヶ月以上であっても、呼吸状態によってはクリニックでフォローできない場合もあります。

外来で治療を継続する場合でも頻回の外来受診が必要となります。

 

治療としては、

経口摂取ができない場合→輸液

低酸素血症がある場合→酸素投与

鼻づまりがひどい→鼻吸引

などの対症療法の実施で自然軽快を待つほか、有効な治療は存在しません。

ステロイドの吸入や、交感神経刺激薬の吸入も、有効性が認められたとの報告は現時点でありません。

3%食塩水吸入により、入院率の低下や入院期間の短縮が認められたとの報告があり、僕が勤務する病院でも実施していますが、現時点で有効性については議論が続いているところです。

細菌感染の合併が示唆される場合には抗菌薬投与を行う場合があります。診察、検査結果を踏まえて医師が判断します。

 

⑤治療後の見通し(予後)

治療後に関してです。予後としては一般的には良好です。

無呼吸を呈する場合には死亡例も報告されており、慎重な呼吸評価が望まれます。

また、RSウイルス罹患後に反復する喘鳴や、喘息症状がみられることがあります。

 

最後に

RSウイルス怖い!となったかもしれませんが、1歳を超えているお子さんや、大人でRSウイルス感染が生じた場合、多くは「熱と鼻水と咳が少し長引くウイルス感染」で済むことが多いです。

 

とにかく、強い呼吸困難、多呼吸、鼻翼呼吸(呼吸のときに鼻の穴を大きくしたり小さくする)、陥没呼吸(呼吸のたびに胸がべこべこ凹む)、指先や唇の色が青紫になる、ミルクの飲みが悪い、などの症状が出現するようなら、入院適応がある場合が多いです。すぐに医療機関受診をしてください。

 

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小児科医あきらでした。

 

 

【ある小児科医の提言】ぐったりしておしっこも殆ど出ない。小児の脱水症について

 


では今回は「脱水症」について勉強していきましょう。 ひとえに脱水といっても、脱水に至る原因によって様々な病態があります。ただ、気をつけなければならないことはシンプルです。医師は、入院が必要か必要でないか、その点を病歴や診察、検査所見で判断しています。もっと具体的に言えば、緊急で輸液を行い、脱水・電解質異常(ナトリウムやカリウム、クロールなど)・低血糖の補正の必要性があるかどうかを診ています。 

ポイント

呼吸や手足の冷たさ、顔色などの見た目がいつもと違うと感じたら医師の診察を検討した方が良いです。お母さんお父さんが一番自分のお子さんの「変化」に気づく能力が高いです。どうしても心配が拭えないのであれば、早めに医師の診察を受けたほうが無難であることを最初にお伝えしておきます。その際、受診相談前に確認しておいた方がいいことを初めにお伝えします。

  • 体重

病気にかかる前の体重と、現在の体重を比較して、どのくらい体重減少しているか、ということは重症度の評価目安になります。-5%を超えている場合、中等度以上の脱水の可能性があります。

  • 発症はいつからどんな症状がでていたか

例えば下痢嘔吐症状がではじめて間もなく脱水になることは考えにくいです。5分前から急に下痢嘔吐があって、、と深夜2時とか3時頃に救急外来へお電話をいただくことが度々ありますが、そういったお子さんで夜間に輸液を要する全身状態になっているお子さんはあまり見かけません。最初に記載したように、呼吸や手足の冷たさ、顔色不良などを慎重にみていただき、普段とかわりなく落ち着いて眠れているようなら、朝一番でかかりつけのクリニックを受診いただければ十分かと思います。大体1日以上の症状持続があり、診察をしてみて中等度以上の脱水が有り、経口摂取ができないと判断できるお子さんに血液検査・尿検査・輸液を行うことが多いです。

  • 食事と水分の量

最後にとった食事がいつ頃で、何を食べたのか、一口しか食べられなかったか、半分程度だったのかなど、医師に伝える時は大体の量を具体的に話していただけると、とても助かります。

  • 排尿回数

今朝から何回排尿があったか、おしっこの時間は短かったか、いつも通りの量だったか、など、具体的な頻度を教えてくれると評価しやすいです。 
これらを確認して医師の診察を受けに来てくださると、きっとスムーズに診療が進むと思います。 

 

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【ある小児科医の提言】皮膚が赤くてカサカサしてる。とても痒そう!アトピー性皮膚炎について

こんにちは、あきらです。

今回はアトピー性皮膚炎に関して書いていきます。本稿は中村健一著 診療所で診る子供の皮膚疾患を参考に記載しています。例のごとく重要な点からまずお示ししたいと思います。

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【ある小児科医の提言】医師「夏風邪ですねー」→夏風邪って何???中編:ヘルパンギーナ

こんにちは、小児科医あきらと申します。
今回は前中後編で「夏風邪」に関してご説明します。
小児科でいうところの「夏風邪」とは、下記流行性疾患、いわゆる①プール熱(咽頭結膜熱)、②ヘルパンギーナ、③手足口病の3つの疾患を指します。
それぞれの感染症に関して記載いたします。 今回のテーマは編:②ヘルパンギーナです。 後編は手足口病です。 
 
それぞれ、①定義と原因 ②症状 ③治療 ④治療後の見通し
にわけてお話しようと思います。

 

【小児科医の提言】変な咳して辛そうだ!クループ症候群の対応

はじめまして、小児科医あきらと申します。

今回はクループに関してご説明します。

大事なことを一番初めに記載しますので

ご確認ください。 

ⅰ.お子さんが息を吸う時に喉、胸を凹ませながら呼吸している!

ⅱ.脈拍が全速力で走った後のように早い!

ⅲ.唇の色がいつもと違って紫色や青色に見える!

ⅳ.よだれが飲み込めなくて口からこぼれ出て、舌も犬みたいに出している!

ⅴ.起き上がって顎を前に、頭を後ろにして口を開けて喘ぐように息をしている!

このような状態になっているお子さんをみたら、近くの救急外来受診してください。
電話で外来に直接相談するか、症状の進行が早い場合には救急車を呼んでいただいて構いません。
気道閉塞は緊急性が高いため、迷ったら救急車で問題ないです。

 

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【ある小児科医の提言】けいれんしてる!小児のけいれんに関しての一般的な話

こんにちはこんばんは、小児科医あきらです。
 
今回は小児のけいれんに関してご説明します。
一番最初の投稿で「熱性けいれん」に関して記載しましたが、今回はけいれん全般に関してお伝えしようと思います。本稿は 金子堅一郎著 イラストを見せながら説明する子どもの病気とその診かた (南山堂)を参考に記載しております。
大事なことを一番初めに記載しますのでご確認ください。 
 
「けいれん発作の持続が30分以上続くか、短い発作でも反復し、その間意識回復がないもの」を、けいれん重積状態といいます。
・けいれんが10分以上続く場合には救急対応が必要となりますので、近隣の救急外来受診もしくは救急車の要請が必要となります。
痙攣の治療原則はまず痙攣の原因を調べ、原因に対する治療を行うことです。
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以降は①定義 ②原因 ③症状 ④治療 ⑤治療後の見通し
にわけてお話しようと思います。