小児科医からこれだけは言わせて

写真が趣味の小児科医が小児臨床の現場のことやカメラのことを記載していく

ここ4年間で日本国内の感染報告数が20倍以上増加した疾患【麻疹(はしか)の症状・検査・治療に関して】

アキラです。

前回記事の続きです。

 

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麻疹の臨床症状

麻疹ウイルスは麻疹患者の咳やくしゃみで空気中に飛び散り、空気感染で気道から体内に侵入します。また、麻疹患者の気道分泌物を粘膜に接触させることでも感染が成立します。

感染力は非常に強く、潜伏期間は6-21日、平均13日と言われています。

発疹出現7日前

徐々に上皮系の細胞でウイルスが増殖します。

発疹出現3日前

発熱・鼻汁・眼球結膜充血など、風邪のような症状が出現します。この時期は「カタル期」と呼ばれます。

このときに既にくしゃみや咳嗽、鼻汁には大量の麻疹ウイルスが排出されています。

発疹出現

はじめに口腔粘膜にコプリック(Koplic)斑が出現する場合が多いです。

この所見は麻疹に特徴的で、麻疹を早期診断するために有用となります。

一時的に解熱経口となりますが、すぐに高熱となり、全身に発疹が広がります。紅斑性丘疹と呼ばれるタイプで、まずは耳介後部や顔面から出現し、1-2日の経過で全身に広がっていきます。

ところどころ健康な皮膚面があることも麻疹の特徴です。

発疹出現4-5日後

徐々に解熱し、発疹は色素沈着を残し軽快していきます。

 

検査 

臨床診断例、検査診断例に分けられますが、

①麻疹に特徴的な発疹

②発熱

③咳嗽、鼻汁、結膜充血などのカタル症状

これら3つをすべて満たす場合、検査未実施でも届け出が必要となります。追って検査を行います。

検査診断の方法としては、咽頭拭い液や血液、髄液、尿から分離同定による病原体の検出、検体から麻疹遺伝子の検出、血液検査での麻疹ウイルスに対しての抗体値の測定により行われます。

 

治療・予防

麻疹に対しての特定の治療方法はありません。合併症に対しての対症療法を行っていきます。細菌感染を合併することが想定される場合には抗菌薬投与を行います。感染が人がってしまう可能性があるため、隔離が必要となります。(解熱してから3日経過するまで)

予防に関しては前回記事で記載した通りです。ワクチン接種が極めて重要となります。もし感染者と接触してしまった場合には、曝露後72時間以内に麻疹含有ワクチンの緊急接種をすることで発症を予防できる可能性があります。6日以内であれば免疫グロブリン製剤を使用することでも予防効果、症状軽減効果があると言われています。もし麻疹患者さんと接触した可能性がある場合には必ず近くの医療機関にご相談ください。また、感染者と接する際には普通のマスクでは感染してしまうリスクが有るため、N95という特殊なマスクの使用が必要となります。

 

最後に

前回記事でも記載しましたが、麻疹は合併症の悪化により、後遺症が残ったり、死に至る可能性がある疾患です。

ワクチンの投与をすることにより抗体は95-98%の方で陽性化します。海外を訪れる方や、不特定多数の外国人と接触がある方、小さいお子さんとお住いになられている家族の方など、前回記事のリストに挙げた項目に当てはまる方は、積極的ワクチン接種をおすすめします。

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アキラでした。
 
参考文献
小児感染症マニュアル2017
year note 2019