小児科医からこれだけは言わせて

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風疹の予防接種を受けて、これから生まれてくる赤ちゃんを守ろう。

はじめに

40歳〜57歳男性の方、もしくはご家族でその年齢の方がいる場合に読んでいただきたい記事です。
 今回は風疹に関しての記事です。
風疹とは風疹ウイルスによって生じる感染症で、患者のくしゃみ、咳によって飛び散ったウイルスを吸い込んだりすることで感染し、2-3週間の潜伏期間の後に発生します。
 

症状

先程述べたような咳などの上気道症状に加えて、発熱発疹リンパ節腫脹関節痛などの症状が出る場合がありますが、すべての症状が揃わなかったり、自覚症状がほとんど出ない場合もあります。
 

危険性

ではなぜこの疾患の予防接種が大事なのかに関してご説明します。
妊娠中の女性に風疹を感染すると、生まれてくる赤ちゃんに先天性風疹症候群と呼ばれる先天異常が生じてしまう可能性があります。
目:白内障・緑内障・色素性網膜症
耳:先天性難聴
心臓:先天性心疾患
その他:紫斑、脾腫、小頭症、精神発達遅滞、髄膜脳炎、骨病変、黄疸
 
新生児にこれらの臨床症状があった場合、先天性風疹症候群を疑い、抗体検査やウイルス遺伝子の検査で確定診断します。ここ10年間で51人がこの先天性風疹症候群の診断に至っています。

成人でもワクチンを接種することの重要性

この疾患は予防可能です。妊婦さんが風疹に罹患しなければこの先天異常が出現することはありません。妊婦さんは妊娠中に予防接種を打つことができないため、周囲の人たちが予防接種を受け、風疹の蔓延を防ぐ必要があるのです。
 

流行

国立感染症研究所の「感染症発症動向調査」によれば、風疹もしくは先天性風疹症候群に罹患した患者数が2018年に2917名、2019年には(11月の時点で)2263名とそれまでの4年間と比べて格段に罹患者が増加していることがわかります。

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国立感染症研究所 感染症発症動向調査
 
40-57歳(昭和37~昭和53年度生まれ)の男性は風疹のワクチン接種がなかったため、風疹の抗体を持っている割合が低いことも報告されています。1)
 
 
 
これらの世代の男性に対して抗体検査・ワクチン接種を原則無料で実施できるクーポン券を配布していますが、接種を受けた方はまだまだ少ないという状況にあります。
2019年度にクーポン券を配送された646万人のうち、抗体検査を受けたのは(昨年11月までの時点で)97万人であり、まだ検査を実施していない方が大半を占めている状況にあります。1)
市区町村からクーポンが既に届いている場合には、まずは抗体検査を受けましょう。検査は健康診断に併せて実施しても近隣の医療機関でも受けることができます。
検査の結果で、十分な抗体がついていないことがわかった場合には予防接種を受けて下さい。
この年代の方でクーポン券が届いていない、もしくは無くしてしまった場合には、お住いの市区町村にお問い合わせ下さい。
 
今夏、東京オリンピック・パラリンピック開催が控えており、風疹対策としてワクチン接種が急務となっている状況にあります。会社で実施する定期検診に抗体検査を導入するなどの対策強化も厚労省から企業に要請しています。
風疹対策強化 企業に要請へ 五輪・パラ前に 厚労省 | NHKニュース   https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200131/k10012266511000.html

最後に

繰り返しになりますが、先天性風疹症候群は予防可能な疾患です。
風疹の流行を防ぐため、40-57歳(昭和37~昭和53年度生まれ)の男性、妊娠を控えた女性はまずは検査を受け、必要な場合には風疹のワクチンを受けて下さい。
出生した赤ちゃんが先天性風疹症候群となってしまった場合には上記に示した先天性障害が発生し、治療は対症療法とするより他はなく、根治療法は困難です。
社会をあげて風疹感染を予防することが非常に重要であると考えられます。
 
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
小児科医あきらでした。
 

参考リンク

1)風疹流行に関する緊急情報:2020 年 1 月 22 日現在 国立感染症研究所 感染症疫学センター

https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/rubella/2020/rubella200122.pdf

2)昭和37年度~53年度生まれの男性の皆さんへ 風しんの予防接種にご協力ください! 政府広報オンライン

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201406/3.html

3)風疹Q&A(2018年1月30日改訂)国立感染症研究所

https://www.niid.go.jp/niid/ja/rubellaqa.html