【ある小児科医の提言】ぐったりしておしっこも殆ど出ない。小児の脱水症について
では今回は「脱水症」について勉強していきましょう。 ひとえに脱水といっても、脱水に至る原因によって様々な病態があります。ただ、気をつけなければならないことはシンプルです。医師は、入院が必要か必要でないか、その点を病歴や診察、検査所見で判断しています。もっと具体的に言えば、緊急で輸液を行い、脱水・電解質異常(ナトリウムやカリウム、クロールなど)・低血糖の補正の必要性があるかどうかを診ています。
ポイント
呼吸や手足の冷たさ、顔色などの見た目がいつもと違うと感じたら、医師の診察を検討した方が良いです。お母さんお父さんが一番自分のお子さんの「変化」に気づく能力が高いです。どうしても心配が拭えないのであれば、早めに医師の診察を受けたほうが無難であることを最初にお伝えしておきます。その際、受診相談前に確認しておいた方がいいことを初めにお伝えします。
- 体重
病気にかかる前の体重と、現在の体重を比較して、どのくらい体重減少しているか、ということは重症度の評価目安になります。-5%を超えている場合、中等度以上の脱水の可能性があります。
- 発症はいつからどんな症状がでていたか
例えば下痢嘔吐症状がではじめて間もなく脱水になることは考えにくいです。5分前から急に下痢嘔吐があって、、と深夜2時とか3時頃に救急外来へお電話をいただくことが度々ありますが、そういったお子さんで夜間に輸液を要する全身状態になっているお子さんはあまり見かけません。最初に記載したように、呼吸や手足の冷たさ、顔色不良などを慎重にみていただき、普段とかわりなく落ち着いて眠れているようなら、朝一番でかかりつけのクリニックを受診いただければ十分かと思います。大体1日以上の症状持続があり、診察をしてみて中等度以上の脱水が有り、経口摂取ができないと判断できるお子さんに血液検査・尿検査・輸液を行うことが多いです。
- 食事と水分の量
最後にとった食事がいつ頃で、何を食べたのか、一口しか食べられなかったか、半分程度だったのかなど、医師に伝える時は大体の量を具体的に話していただけると、とても助かります。
- 排尿回数
今朝から何回排尿があったか、おしっこの時間は短かったか、いつも通りの量だったか、など、具体的な頻度を教えてくれると評価しやすいです。
これらを確認して医師の診察を受けに来てくださると、きっとスムーズに診療が進むと思います。
次に知っておいてほしいこととして、経口補水液(OS-1やアクアライト)の飲み方です。
症状が出ているとき、ある文献では初めの4時間で与える経口補水液の量が記載されています。
年齢 | 体重 | 量 |
<4ヶ月 | <6kg | 200-400mL |
4-11ヶ月 | 6-10kg | 400-700mL |
1歳 | 10-12kg | 700-900mL |
2-5歳 | 12-19kg | 900-1400mL |
これが一つの目安となります。
また、発熱を伴う場合にはこちらの記事も参考にご対応ください。
では以降は小児の脱水の一般的概要を簡単にお示しします。
背景
小児は大人と比べて体重あたりの体表面積が大きく、必要水分量も多く、水分の代謝は早く、腎機能が未熟です。乳児の場合には自分で症状を訴えることも出来ず、元気がないと水分摂取も拒んでしまうことがあります。さらに、発熱、下痢、嘔吐、食欲不振などの症状をきたす感染症にかかるリスクも高いです。
重症度の評価
医師がどういったことを評価しているかといえば、最初のポイントとして挙げた体重減少をまず確認します。次に意識がはっきりしているか、呼吸回数は正常範囲内か、脈拍は早くないか、血圧は正常か、眼球の落ちくぼみがないか、口の中や口唇が乾いていないか、皮膚の張りが落ちていないか、四肢が冷たくないか、チアノーゼと呼ばれる、酸素化不良の所見がないかといったことをバイタルサインや診察で判断します。
ERでの対応
明らかに「軽症」に分類できると判断すれば、外来で経口摂取を試して嘔吐の再燃なく落ち着いていることを確認して、帰宅とします。ただ症状が改善してくることを確認するまでは外来加療が必要です。
中等度以上の脱水があり、経口摂取が難しいと判断した場合には速やかに輸液を開始した上で原因精査のため、検査を提出します。年齢や症状によって考えるべき疾患は多岐に渡るため、今回は割愛します。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
知り合いに記事を評価してもらったのですが、やや真面目すぎる、硬すぎる、と言われてしまいました。確かに、もう少し意識的にゆるい記事にすることも試してみようかな、と思っています。 ただ内容が医学的内容なだけに間違っていたりや誤解の生じる内容になっては記事を書く意味がないので、その点は慎重に記載していきます。
これからもシンプルでわかりやすい医療情報のシェアを続けていきます。もしよければ読者登録・ブックマーク・ブログのシェアいただけると本当に嬉しいです。どうぞよろしくお願い申し上げます。
小児科医あきらでした。
2019/6/22
*1:WHO Pocket Book of Hospital Care for Children. Guidelines for the Management of Common Childhood Illnesses 2nd edition.2013