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【ある小児科医の提言】医師「アデノ陽性ですね〜」アデノって何? アデノウイルス感染症について

こんにちは、小児科医あきらです。

今回は「アデノウイルス感染症」 についてお話します。

以前、アデノウイルス感染症のうちプール熱(咽頭結膜炎)に関してに関して記載しましたが、その他にも表現型があるウイルス感染症なので、まとめて書いていきますので、この記事を読んでいただければアデノウイルスに関して十分な知識を得ることができると思います。

プール熱の記事はこちらです。

 

drakira.hatenablog.com

概要

臨床病態としては、咽頭炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎などの呼吸器感染症、咽頭結膜熱や流行性結膜炎などの眼感染症、出血性膀胱炎、胃腸炎、脳炎などがあり、一部、腸重積、腸管リンパ節炎、虫垂炎などにも関与します。

この感染症では他のウイルス感染症に比べて、炎症の度合いを示す一つの目安となる「CRP」と呼ばれる血液検査の結果が高値となることが多く、細菌感染症との鑑別が大事となってくることがあります。

流行機としては晩冬から春季、初夏に患者数の増加がみられますが、基本的に季節性はなく、年中感染者の報告はあります。

アデノウイルスの中には数十の型があり、どの型に感染するかで症状が変わってきます。しかし、臨床上どの型に罹患したかを同定することは必ずしも必要ではありません。

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診断

ウイルスの迅速キットがあり、患者さんの鼻汁、唾液、咽頭拭い液、喀痰などの検体からウイルスを分離して検査できます。発症から時間が経っている場合、一部の症例では本当は感染しているのに検査で陰性となってしまう場合があります。(検査感度は70%程度)

その場合には血液検査での診断とします。しかし血液検査ではすぐに診断がつかず、診断までの期間として数日を要します。

 

感染対策

潜伏期間は7-10日と長く、接触感染での感染力も高いです。アデノウイルスは経口感染あるいは飛沫経気道感染により伝播し、咽頭や結膜、消化管などの粘膜上皮、所属リンパ節で増殖します。また、糞便中に多量に排泄されており、それによっても糞口感染や接触感染を起こします。

プールなどで水やタオルが汚染されている場合には、ウイルスが粘膜から直接侵入するため、集団感染をきたすことがあります。したがって、咽頭結膜熱の流行の予防には、プールの十分な塩素消毒と、粘膜の洗浄、タオルを共有しないことがとても重要となります。近所の区民プールや、学校での水泳の授業の際には感染対策をきちんとしましょう。同じ学校や地域でプール熱が流行しているときには特に、くれぐれもタオルなど使い回さないようにしてください。

学校保健法では、アデノウイルスの臨床病型のうち「咽頭結膜熱」の診断に至った際には目と喉の症状が治まってから2日間を経過するまで出席停止扱いになります。

 

 

臨床病態ごとにまとめていきましょう。

眼疾患

 流行性角結膜炎

目脂と充血及び眼瞼結膜充血が主症状で、かゆみは殆どないとされます。耳前リンパ節腫大がみられることもあります。重症例や小児では結膜上にフィブリンや膿からなる偽膜が形成されます。

目脂で迅速検査を提出しますが、先程も述べたように一部症例では感染しているにもかかわらず陰性となってしまう場合があります。臨床症状で本症例と診断をつけ、感染リスクも考慮し、学校や保育園をお休みしていただく場合もあります。

だいたい10日から2週間で自然治癒しますが、重症例では角膜上皮下混濁をきたすことがあるため、ステロイド点眼や外科的偽膜除去、二次感染予防のため、抗菌薬点眼を行うこともあります。

呼吸器感染症

 急性咽頭扁桃炎

典型例では喉の奥に白いぽつぽつした滲出物がつき、真っ赤に腫れる急性扁桃炎を呈します。

高熱が数日間続き、自然経過で症状は軽快します。

 下気道炎

アデノウイルスの一部の型では重症肺炎をきたすものもあります。

消化器系疾患

 乳幼児下痢症

下痢症をきたした小児の5~9%の糞便からアデノウイルスが検出されます。多くの場合、一般的にロタウイルス性腸炎と比べて軽症なことが多いです。

 急性腹症(腸重積、虫垂炎)

上記疾患においてもしばしば糞便中にアデノウイルスが分離される場合があり、短期間に立て続けに繰り返すことがあります。下痢症状があり、上記の疾患となっていた場合にはアデノウイルス感染も考慮する必要があります。

泌尿器疾患

 出血性膀胱炎

血尿、排尿障害、頻尿などの症状を呈します。

 

治療

現在、これら急性感染症に対して有効な抗ウイルス薬はありません。重症肺炎に対してはステロイド投与による治療が試みられています。高熱が続くため、患者さん御本人の不快感を抑えるという意味でアセトアミノフェンを使用する場合があります。

 

簡単ではありますが、アデノウイルス感染症のまとめでした。

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小児科医あきらでした。