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【ある小児科医の提言】熱、口と目と手の赤み、首の痛みと発疹 川崎病について 後編

こんにちは。小児科医あきらです。

川崎病の後編、IVIGとアスピリン以外の治療に関してです。前回も載せましたが、一応川崎病急性期治療のガイドラインのフローチャートを載せておきます。ご参照ください。

 

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メチルプレドニゾロンパルス

メチルプレドニンパルス(以下IVMP)療法は、ステロイド薬の中でも電解質左様の少ないメチルプレドニゾロン(MP)を大量に点滴静注する治療です。
体重1kgあたり15-30mg/kgのMPを2-3時間かけて3日間投与します。
 

プレドニゾロン

最も一般的に使用される合成副腎皮質ホルモンです。体重1kgあたり2mgを1日3回経静脈的に投与します。
解熱し、全身状態が改善してから経口投与とし、CRPという炎症の度合いを示す一つの目安となる血液データが0.5mg/dLを下回ってから5日間継続します。再燃の徴候がなければ体重1kgあたり1mg 、0.5mgと減らしていき、中止します。
漸減中再燃を認めた場合には免疫グロブリンの追加投与やステロイドの再増量を検討します。

インフリキシマブ

インフリキシマブ(IFX)はヒトTNF-αとくっついて炎症経路を抑制し、炎症を押さえ込みます。IVIG不応例の川崎病に使用可能です。副作用としては感染症や投与時の急性反応である(infusion reaction)があります。この薬剤を使用する前には結核菌などの抗酸菌感染の既往や、肝炎ウイルスの罹患があるかなど、各種感染症に関して検査を行います。

シクロスポリンA

シクロスポリン(CsA)はカルシニューリンというT細胞の活性化を促すシグナルの一部を阻害して炎症をきたすサイトカイン(IL-2など)を抑制することで、免疫応答を抑えます。本薬剤の投与期間は確立されたものがなく、血液データを参考に投与終了時期を決定します。

メトトレキサート

いくつかの薬理作用により、免疫抑制作用をきたしますが、低用量での炎症抑制のメカニズムの詳細はわかっていません。IVIG不応例に使用します。
 

血漿交換

高サイトカイン血症が本疾患の病態に関与しているため、そのサイトカインを除去することで、IVIG不応の強い炎症反応を沈静化してしまおう、という治療です。
 

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 最後に

専門施設でないと、インフリキシマブなどの生物学的製剤や、免疫抑制剤、血漿交換を実施することができないため、一般的市中病院での治療で、インフリキシマブ以下の治療を実施することはほとんどありません。IVIGやIVMPに反応性が悪く、症状改善がみられない場合、小児病院や大学病院へ転院搬送となります。
最近では治療が遅れて巨大冠動脈ができてしまう川崎病の症例は少なくなってきている印象ですが、川崎病の罹患者数自体は増加しています。速やかに診断、治療を行う必要がある疾患と言えるでしょう。
 
長くなってしまいましたが、ここまでが川崎病の治療に関してのまとめになります。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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どうぞよろしくお願い申し上げます。
小児科医あきらでした。
2019/7/11
 
参考文献
日本小児循環器学会研究委員会研究課題「川崎病急性期治療のガイドライン」 (平成 24 年改訂版)