小児科医からこれだけは言わせて

写真が趣味の小児科医が小児臨床の現場のことやカメラのことを記載していく

【ある小児科医の提言】子供がお腹を痛がっている 腹痛時の対応について

 
はじめまして、小児科医あきらと申します。
小児期の腹痛に関してご説明します。
なお、本稿は 金子堅一郎著 イラストを見せながら説明する子どもの病気とその診かた (南山堂)を参考に記載しております。その他引用、参考資料に関しては最後に記載しております。

大事なことを一番初めに記載しますのでご確認ください。 
急に出現した激しい痛み
顔色が悪い・機嫌が悪い
活気がない、ぼーっとしている
頻回の嘔吐(緑色の吐物を伴う)、粘血便、吐血、下血などの症状
上記のものがあったら急いで治療が必要な状態にある可能性があります。 速やかに医療機関を受診してください。
 
以降は①定義 ②原因 ③症状 ④治療 
にわけてお話しようと思います。

①定義

もちろん、腹部の痛みです。しかし、年齢によっては痛みの訴え方がわかりにくい場合があります。乳幼児は言葉で上手に訴えることができません。持続する機嫌の悪さや、腹部を触られるのを嫌がる、などの反応に気づいた場合には腹痛に該当すると考えてください。
 

②原因

多くは消化管疾患ですが、心因性や外傷、腹部外疾患の可能性もあります。
原因疾患を挙げるとキリがないので、高頻度なものと比較的低頻度なものに分けて、年齢別にご説明します。
(2歳未満)
高頻度:乳児疝痛、胃食道逆流、急性胃腸炎
低頻度:外傷、腸重積、ヘルニア嵌頓、ミルクアレルギー、鎌状赤血球症
(2~5歳)
高頻度:急性胃腸炎、便秘、尿路感染症、外傷、急性虫垂炎、肺炎、気管支喘息、鎌状赤血球症
低頻度:メッケル憩室、IgA血管炎、中毒、嚢胞線維腫症、ネフローゼ症候群
(6~12歳)
高頻度:急性胃腸炎、便秘、外傷、虫垂炎、尿路感染症、機能性腹痛、鎌状赤血球症
低頻度:肺炎、気管支喘息、濾胞線維腫症、炎症性腸疾患、消化性潰瘍、胆管炎、急性膵炎、精巣捻転
(12歳以上)
高頻度:急性胃腸炎、胃食道逆流、外傷、虫垂炎、便秘、骨盤内炎症疾患、尿路感染症、肺炎、気管支喘息、月経困難症、精巣上体炎、鎌状赤血球症、排卵痛、乳糖不耐症
低頻度:子宮外妊娠、精巣捻転、卵巣捻転、腎結石、消化性潰瘍、急性肝炎、胆管炎、急性膵炎、メコニウムイレウス、血管炎症候群、炎症性腸疾患など
 

③症状

疾患によって訴える腹痛、随伴症状が異なります。
痛みの出方も、急性、遷延性、反復性など分けられ、なかでも最初に示したように急性の腹痛の中に処置を急いだほうがいい疾患が隠れていることが多いです。
嘔吐下痢、発熱、吐血や下血など痛みに伴う症状も診断を進める上で重要となります。
 
 

④治療

初期治療と注意する点に関してですが、医療面接、診察所見から鑑別を勧め、その後の検査、治療の計画を立てていきます。
上記診断のうち、緊急に外科的治療を要するものであった場合には小児外科に相談することもあります。
薬物療法、食事療法が奏功するもの、精神療法が必要なものまで、原因によって治療内容が変わってくるため、本項目では一概に自宅ではこうするべき、とは指定できません。
 

まとめ

繰り返しになりますが、に出現した激しい痛みであったり、顔色が悪い・機嫌が悪い、活気がない、ぼーっとしているなどの症状が持続する場合や、頻回の嘔吐(緑色の吐物を伴う)、粘血便、吐血、下血などの症状があったら緊急の治療を要する場合があります。 速やかに医療機関を受診してください。
 
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
これからもシンプルでわかりやすい医療情報のシェアを続けていきます。
もしよければ読者登録・ブックマーク・ブログのシェアいただけると本当に嬉しいです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
小児科医あきらでした。
 
参考文献
・当直医のための小児救急ポケットマニュアル 五十嵐 隆(監修)
・イラストを見せながら説明する子供の病気とその診かた 南山堂