小児科医からこれだけは言わせて

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インフルエンザの予防についてのまとめ

こんにちは。東京都のホームページから都内のインフルエンザ流行の情報を2週間ごとに確認することができますが、11/8の報告ではまだそれほど流行は見られていません。http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/flu/
例年の報告では12月に入ってから徐々に患者報告数が増加し、3月頃まで流行は継続しているようです。あと1-2週間で流行時期似突入することが想定されます。
 
「インフルエンザの予防接種打った方がいいよ」と言われていますが、実際にどのくらいの予防効果があるのか、有害事象(副作用)はどんなことが挙げられるのかなど、今回はインフルエンザ予防に関してまとめてみました。
厚生労働省のHPに詳しく記載があるのですが、今回は予防についてフォーカスして確認していきましょう。
 

インフルエンザの症状について

前々回の記事でも触れていますが、まずはインフルエンザの症状に関してご説明します。

 

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インフルエンザは、「インフルエンザウイルス」に感染することで生じる疾患です。38度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などの症状が急に出てきます。
 
また、咽頭痛、鼻汁、咳嗽など、普通の風邪でも出るような症状も伴うことが多いです。
小児では急性脳症と呼ばれる中枢神経症状を伴ったり、高齢者や免疫力が低下している方では肺炎をきたす場合もあり、いわゆる重症インフルエンザと呼ばれる状態で入院が必要となることもあります。
 

インフルエンザワクチンの有効性について

予防接種が有用といわれる根拠となる研究は、「ワクチンを摂取しなかった人が病気にかかるリスクと比較して、摂取した人が病気にかかるリスクがどの程度減少したか」という指標で示されます。
 
6歳未満の小児を対象とした2015/16シーズンの報告では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は60%と報告されています。「インフルエンザ発病防止に対するワクチン有効率が60%」とは、下記の状況が相当します。 
・ワクチンを接種しなかった方100人のうち30人がインフルエンザを発病(発病率30%) 
 
・ワクチンを接種した方200人のうち24人がインフルエンザを発病(発病率12%) 
→ ワクチン有効率={(30-12)/30}×100=(1-0.4)×100=60%
 
ワクチンを接種しなかった人の発病率を基準とした場合、接種した人の発病率が、「相対的に」60%減少しています。すなわち、ワクチンを接種せず発病した方のうち60%(上記の例では30人のうち18人)は、ワクチンを接種していれば発病を防ぐことができた、ということになります。 現行のインフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありません。しかし、インフルエンザの発病を予防することや、発病後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとされています。
 
 

副反応について

インフルエンザワクチンの接種後の副反応は皆さん気にされる点だと思われます。一番多く現れる副反応としては接種部位の発赤・腫脹・疼痛が挙げられます。(10-20%)
全身性の反応としては、発熱・頭痛・寒気・だるさなどがあり、これらは5-10%に見られると言われています。これら症状は通常2-3日でおさまってきますので、特に心配する必要はありません。
その他に極稀ではありますが、一部重い副作用が出現する場合もあります。
アナフィラキシーや急性散在性脳脊髄炎、脳炎脳症、痙攣、脊髄炎、ギラン・バレー症候群、視神経炎、血小板減少性紫斑病など、様々な副反応が出現する可能性を指摘されています。
普段と様子が異なる、今までできていたことができなくなる、発疹が気になるなどワクチン接種後に出てきた場合には早めにクリニックを受診していただいたほうが良いかと思われます。
 
 

ワクチン以外の予防方法

・外出後の手洗い
・適切な湿度の保持
・十分な休養とバランスのとれた栄養摂取
・人混みや繁華街への外出を控える
 
気道粘膜の防御機能を保つため、マスクによる保湿や、加湿器などを使用して適切な湿度を保つことが有用とされています。
仕事をしていたり、学校へ行ったり社会生活を営むにあたって人との関わりは避けられません。
流行期に入る前から適切な対応をするよう心がけることが重要です。
 

最後に

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
これからもシンプルでわかりやすい医療情報のシェアを続けていきます。
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どうぞよろしくお願い申し上げます。
小児科医あきらでした。
 
 
参考文献
1)平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷齊(国立療養所三重病院))」
 
2)平成28年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究(研究代表者:廣田良夫(保健医療経営大学))」