小児科医からこれだけは言わせて

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【うんこが出ない】こどもの便秘症について

うんこの問題はとても厄介ですね。

特にうんこが出ないことは本当に辛いです。今回は、うんこが出ないこと、いわゆる便秘についてまとめを作成してみました。

本項は基本的に小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインに沿って記載していきます。

 

定義

「便秘症」とは,便秘またはそれによる症状が表れ,診療や治療を必要とする場合である.便 秘は病状の期間から慢性便秘(症)と一過性便秘(症)に,原因から機能性便秘(症)と器質性便秘(症)に分類され,慢性機能性便秘症の診断基準として国際的には Rome III が使用されている.

 ー小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン

 

と記載があります。 RomeⅢの定義は下記のとおりですが、臨床的に「排便の頻度が少なくてお腹を痛がっていて便が固くて、、」という訴えがあれば便秘症を疑って精査します。今回まとめたガイドラインでは新生児の便秘や一過性便秘や器質的原因による 便秘は対象としていません。一過性のものではなく、持続的に便秘の症状がある患者さんに対しての記事と捉えていただければ幸いです。

 

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文献2*1
文献3*2

小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインより

診断

便秘症の診断では、はじめに「便秘症であるか否か」を症状・病歴・身体所見から確認し、次に便秘症をきたす基礎疾患を鑑別します。

機能性の便秘でしょう、と言われているお子さんの中に一定の割合で外科的治療が必要な基礎疾患がある子がいる場合があるため、そういった疾患が疑わしい場合には精査を行うことができる小児科もしくは小児外科に紹介となります。

病歴聴取や、身体所見から「これは精査が必要だ」と判断するために、以下の項目を評価します。

 

  1. 生後24時間以降の胎便排泄が遅れたという既往がある
  2. 成長障害・体重減少を認める
  3. 便秘に伴って慢性的に嘔吐を繰り返す
  4. 血便がある
  5. 便の回数は少ないにもかかわらず下痢便である
  6. 腹部が張っている
  7. 腹部に腫瘤を認める
  8. 肛門の形態、位置異常を認める
  9. 直腸肛門指診の異常を認める
  10. 脊髄疾患を示唆する神経初見と仙骨部皮膚初見を認める

これらがみられた場合には器質的疾患、つまりは外科的な疾患ある可能性を考えます。専門施設での精査をするべきかを判断していきます。当てはまらない場合にも、診察・画像検査を行い、

  • 1.腹部触診で便塊を触知する
  • 2.直腸指診で便塊を触知する
  • 3.画像上,直腸に便塊を認める
  • 4.いきんでいるがでないとの訴えがある
  • 5.overflow incontinence(漏便)がある
  • 6.少量の硬い便がでている
  • 7.最後の排便から 5 日以上たっている

上記項目を確認します。これにより、腸内に便塞栓(fecal impaction)があるかどうかを評価します。

便の詰まりを解消し、その詰まりが生じないようにコントロールが必要となります。便塞栓がない場合でも、その後生活、排便習慣の是正、食事指導や薬物治療を考慮します。

 

便塞栓に対しての治療

まずはグリセリン浣腸で、直腸の便を柔らかくし、排便を促します。これにより、速やかに便塞栓が解消され、「楽になった」といってくれることが多いです。繰り返して便塞栓ができてしまう場合には、ビサコジル 炭酸水素ナトリウム+無水リン酸二水素ナトリウムなどの座薬や、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ラクツロース、ピコスルファートナトリウム、センノシドなどの下剤の内服薬を使用します。

 

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維持療法

薬剤加療以前に、まず生活習慣に関しての指導です。食事摂取(乳児では哺乳)の全体量を見直し、年長児では無理なダイエットはしないよう に注意しましょう。

 

過剰な発汗による水分不足(特に乳幼児では着衣や寝汗などが過剰な場合)にも注意を要します。 朝食をとりトイレに行く時間を確保するため,夜更かし・寝坊は避けましょう。規則正しくバランスのとれた食事(食物繊維豊富な)をとり、過剰な間食は避けるようにしてください。

 

また、適度な運動は腸管刺激となり、排便に関してはよい影響を与えるとされます。運動量が少ない場合には適度な運動を心がけましょう。また、便意を感じても排便を我慢することが多いと便秘が悪化しやすいと考えられ、特に学童では学校で便意を感じたら我慢せずにトイレに行くようにしましょう。

 

ガイドラインでは、頑固な便秘症のお子さんの中に、牛乳アレルギーの関与する症例があり,通常の治療に反応しない場合,期間限定で 牛乳制限してみることが推奨されています。もし牛乳摂取を多量にしているお子さんで便秘に悩まされている場合には、牛乳制限を試してみるのもかも良いと思います。

 

治療期間

治療薬の減量・中止が早すぎると再発しやすく、薬物維持治療には通常 6~24 か 月を必要とします。

排便困難がなく規則的な排便が習得できても、数週間は服薬をそのまま継続し、その後数か月をかけて徐々に治療薬の減量,中止を検討します。 幼児では,排便自立ができるまでは治療を継続することが勧められています。

下記のようなフローチャートで効果を判定し、服薬の調整を行います。反応が悪ければ全身疾患、外科的疾患の精査も必要となります。

 

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どうぞよろしくお願い申し上げます。
 
小児科医あきらでした。
2019/07/30

 

*1:Hyman PE, Milla PJ, Benninga MA, et al.:Childhood functional gastrointestinal disorders:neonate/toddler. Gastroenterology 2006;130:1519-1526

*2:Rasquin A, Di Lorenzo C, Forbes D, et al.:Childhood functional gastrointestinal disorders:child/adoles- cent. Gastroenterology 2006;130:1527-1537