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子どもがお腹を痛がっている。このお腹の痛みは盲腸かも? 急性虫垂炎(盲腸)を疑う症状 後編(画像診断・治療)

前回記事↓の続きです。

 

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画像検査

それぞれの画像検査の感度(疾患のあるものを見逃さない割合)、特異度(疾患があるものを捨てない割合)

に関しての以前の報告は下記の通りでした。 

超音波検査では小児患者の場合、感度88%、特異度94%,成人患者の場合感度 83%,特異度 93%と報告されています。

-*1

小児急性虫垂炎患者の腹部CT検査感度は 94%,特異度は 95%であり,成人患者における腹部CT検査の感度および特異度はともに93%と報告されている。*2

超音波検査の診断能は高く、被爆の観点からもCTよりも超音波検査を先に実施される方が良いかと思われます。自分も外来ではまず超音波検査を実施しています。描出が困難な場合にはCT検査を実施します。必要がない場合には必ずしもCTは実施しません。

治療

超音波検査で、虫垂の腫大、壁構造の変化、腫瘤形成の有無を評価し、虫垂腫大、壁構造の変化がある場合には手術または入院して抗菌薬投与開始します。 壁構造に変化がない場合には入院もしくは外来で保存的に経過を追います。筋性防御(お腹を押したときに急激な腹痛の悪化と緊張により、腹部が緊張するという所見)を認める場合には緊急手術の適応があります。

発症から時間が経っており、腫瘤形成を認める場合には入院の上抗菌薬投与を開始し、待機的手術を予定します。

診断後も繰り返し超音波検査を実施し、増悪、改善を評価し、多くの施設では、小児科から小児外科に相談し、手術判断を行います。

 

退院

保存的加療で症状改善を認めた場合、身体所見だけでなく、採血検査での炎症反応の軽快を確認し、抗菌薬終了の上退院としています。その後小児外科の外来に相談し、手術療法の適応に関して相談します。

保存的加療を行った後の再発に関して

抗菌薬投与のみの治療を行った患者さんのうち、5年後の虫垂炎の累積再発率は39.1%であり、約60%の患者は治療開始から5年以内に再発には至らなかったという結果が以下の文献では明らかになっています。

*3

低いと感じるかか高いと感じるかは患者さん次第であり、メリット・デメリットを相談しつつ、手術を実施するか否かを検討します。

 

最後に

以上が急性虫垂炎の診断治療のポイントです。急激な右下腹部に限局する腹痛が出現し、お腹を押して、手を放したときに痛みが増強する、そんな状態だった場合には虫垂炎の可能性が高いです。なるべく早く小児科を受診してください。

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小児科医あきらでした。
2019/07/23

 

 

参考文献

小児急性胃腸炎・小児急性虫垂炎. 日本小児救急医学会ガイドライン作成委員会:診療ガイドライン.2015

内科医・小児科研修医のための小児救急治療ガイドライン 改訂第三版

小児科診療ガイドライン-最新の診療指針- 第三版

新版小児外科学 診断と治療社. 1996

臨床検査 vol.63 no.4 2019年 4月・増刊号

Doria AS, Moineddin R, Kellenberger CJ, et al:US or CT for Diagnosis of Appendicitis in Children and Adults? A Meta-Analysis. Radiology 241:83-94,2006

Salminen P, et al. JAMA; 320: 1259-1265. 2018

*1: 臨床検査 vol.63 no.4 2019年 4月・増刊号

*2:Doria AS, Moineddin R, Kellenberger CJ, et al:US or CT for Diagnosis of Appendicitis in Children and Adults? A Meta-Analysis. Radiology 241:83-94,2006

*3:Salminen P, et al. JAMA. 2018; 320: 1259-1265.